B096 『藤森照信の原・現代住宅再見〈3〉』
藤森 照信、下村 純一 他
TOTO出版 (2006/09)
もう出てたんだ、ということで〈1〉・〈2〉に引き続き〈3〉を図書館で借りてきた。
ついに現代に追いつき妹島和世の「梅林の家」、藤本荘介の「T house」、西沢立衛の「森山邸」まで紹介されている。
ということで後半はこれまでの巻とは若干趣が違う感じがした。
「梅林の家」は鉄板構造で外壁、内壁ともに厚さ16ミリほどの鉄板で出来ているが、そこにあけられた開口によるシュールレアリズムのような光景は全くオリジナルな空間の関係性を生み出している。その感性には脱帽というほかない。
藤森氏はこれらの作品に歴史の原点、本質的なにおいを見出しているように、こういった新しい感性によって空間のあり方というものが”純粋”といえるレベルまで引き寄せられているのかもしれない。
このシリーズで一貫している、「戦後住宅の”開放から自閉へ”」という見方。伊東豊雄はじめ、自閉的・内向的建築家が時代を開いてきたという見方が面白い。
僕も昔、妹島と安藤との間で「収束」か「発散」かと悶々としていたのだが、藤森氏に言わせると妹島はやはり「開放の建築家」ということになるのだろうか?
藤森氏の好みは自閉のようだが、僕ははたしてどちらなのか。開放への憧れ、自閉への情愛、どちらもある。それはモダニズムへの憧れとネイティブなものへの情愛でもある。自閉と開放、僕なりに言い換えると収束と発散。さらにはそれらは”深み”と”拡がり”と言い換えられそうだ。
それはもしかしたら建築の普遍的なテーマなのかもしれないが、その問いは、どちらか?といものよりは、どう共存させるか?ということなのかもしれない。
深みに支えられた拡がり、というような感じか。