循環のイメージを高めたい B281『活かして究める 雨の建築道』(日本建築学会編)
日本建築学会 (編集)
技報堂出版 (2011/7/6)
『エクセルギーハウスをつくろう』の著者がHPで紹介していたので購入。
この前にシリーズとして『雨の建築学(2000年)』『雨の建築術(2005年)』があるが、とりあえず新しいものを選んでみた。
感想としては、総覧的な意味合いが強く少し詰め込み過ぎている感じがした。多数の執筆陣による共著によるせいかもしれないが焦点が定まらない印象を受けた。(個人的に買った本では共著はあまり響かない本であることが多い気がする。)
もっと具体的な内容を知るには『雨水活用建築ガイドライン―日本建築学会環境基準』を買うべきかも知れないが迷うところである。
ここ数冊の読書から、月並みではあるけれども循環のイメージが環境を考える上でも、建築にはたらきの要素を加える意味でも重要な気がしている。
しかし、建築として<かたち>にするには、何かパーツが足りていない気がしていた。 本書を読んで、その足りていない<パーツ>の一つは、「流れ」と「循環」のイメージ、及びそれに対する解像度の高さだったのかもしれない、という気がした。 その解像度を高めつつ、それが素直にあらわれた<かたち>を考える。そして、あわよくば、そこにはたらきが持つ生命の躍動感が宿りはしないか。 そんなことに今、可能性を感じつつある。(オノケン│太田則宏建築事務所 » はたらきのデザインに足りなかったパーツ B275『エクセルギーと環境の理論: 流れ・循環のデザインとは何か』(宿谷 昌則))
その中で、水の循環は地球の、もしくは生命の循環を考える上で特別な意味を持っている。
あわよくば、その水の循環のイメージをより洗練させられればと思ったのだけれども、間違いなく本書の中心問題でありつつ若干物足りなく感じた。(もしかしたら『雨の建築学』もしくは『雨の建築術』の方が目的には適っていたのかもしれない。)
水の循環に関しては、『エクセルギーと環境の理論』『エクセルギーハウスをつくろう』『「大地の再生」実践マニュアル』『よくわかる土中環境』で多少はイメージが掴めてきた。
環境を考える際、都市部におけるとっかかりは地方に比べてかなり限定的になってしまうと思うのだけど、その際、水の循環と小さな生態系を考えることが重要なとっかかりになりそうな気がしている。
外構または植栽というときには、今はまだ、設計・管理するような思考が強いけれども、それをもう少し崩して、敷地の中に生物の営みを含めた新しい状況が生まれるような余白をパラパラと分散化させるようなイメージが浮かんできた。 そういう建物がまちに溢れて、そこに暮らす生き物たちの(多くの人が気づかないような)進化や営みを見つけてほくそ笑む。そんなことができれば素敵だろうな。(オノケン│太田則宏建築事務所 » 都市の中での解像度を高め余白を設計する B257『都市で進化する生物たち: ❝ダーウィン❞が街にやってくる』(メノ スヒルトハウゼン))
雨水だけをみていては大切なものを取りこぼしてしまうのかもしれないな。