二-十七 都市―体験の空間的・時間的レイアウト
体験のレイアウト
建築単体ではなく、都市という視点で出会いを考えた時に、建築と都市はどう考えることができるだろうか。
まず、単純に建築を都市の側から見た時に、どんな意味や価値が見いだせるか、どんな出会いがあるか、という視点がある。建築はそれを直接利用する人だけでなく、道を歩く人や、そこに住む人、観光に訪れる人にとっても意味や価値がある。例えば、道を歩く人が、建築の固有性を感じ取ったり、そこに住む人の生活を感じたりすることで、まちに愛着や親しみを感じたりするかもしれないが、そうして生まれる出会いの集積、体験のレイアウトが「私たちである」という領域をかたちづくる。
もしかしたら、都市とはそういう体験のレイアウトがかたちづくる領域のことなのかもしれないし、一つ一つの建築がそのレイアウトを構成しながら、その構成に変化を与えている、という視点も重要だろう。
もちろん、その体験のレイアウトは、個人としてのものだけではなく、多くの人にとっての意味や価値が重ね合わせられながら、社会的・歴史的に積み重ねられてきたものでもある。それが固有性を持ち、出会いのきっかけを豊富に持っているかどうか、がその都市の性格を方向づける。
ここで、例えば萌芽、余白、流動、更新、喪失、参照、標、刻印、遮蔽、隅などといった言葉が頭に浮かぶが、都市は、体験が空間にレイアウトされるだけではなく、時間的にもレイアウトが変化しながら動き続ける。もし、そこにある建物が喪失されたとしたら、都市における体験のレイアウトはそれに応じて変化するだろう。
人は建築で、都市に出会う。そこには体験の空間的・時間的レイアウトがある。