二-十二 生活―意識を超えた豊かさ
生活に根ざした多様な出会い
生活という言葉には何か意識を超えた豊かさにつながるイメージがある。
生活とは日常における出会いの連続のことである。それは、生きることの基礎であり、直接的なものであり、文化や技術などの公共的な蓄積の基盤である。
生活には本来、出会うことによる悦びや生きることのリアリティが豊かに含まれているものであった。しかし、利便性などを追求する時代の流れの中で、生活の中の出会いの地位は低くなってしまっているように思う。そこでは、生活に本来含まれていた出会いの豊かさは、意識という枠の中に閉じ込められている。
建築における生活のあり方も、出会いを閉じ込めようとした結果であるか、出会いを歓迎した結果であるかで大きく異なってくるし、当然、それを体験する人にとっての出会いの質も異なってくる。後者の建築には、生活に根ざした多様な出会いがあり、意識を超えていくことの爽快さがある。
人は建築で、生活の意識を超えた豊かさに出会う。