二-十六 概念―埋め込まれた思考
思考のサイクルと出会いの密度
思考とは自己と自己との言語を介した出会いの循環、そこで生成された言葉と出会うことで、次の言葉を生成し、またその言葉と出会うというサイクルである。
それは出会いの高速循環であり、圧縮された意味と価値、いうなれば概念のようなものを生む。それは物理的なものではないが、人間にとっては特別な出会いを生むものである。
建築の中にも、それをつくる際にガイドラインとなったような概念が埋め込まれている。その結果としての建築と、体験的、直感的に出会うことももちろん出来るけれども、基になった概念にアプローチし出会うことができれば、、その概念を自らの思考のサイクルに取り込むこともできる。比喩的に書くならば、そこに至る思考プロセスの圧縮されたデータが建築に埋め込まれており、それを自らの中で解凍することで、引用したり改変したりと再利用が可能となる。そのデータの圧縮と解凍の精度は作り手や受け手の技量に大きく関わると思うが、そのデータ量、すなわち、思考のサイクルをどれだけ繰り返したかの違いは、誰にとっても分かりやすい要素なのではないかと思う。
その建築に至るまでどれだけ思考をしたかは、その思考をトレースできなくても(データの中身が理解できなくても)出会いの密度として直感的に感じ取られるものだと思うのだ。
人は建築で、埋め込まれた思考とその密度に出会う。