B046 『建築とデザインのフラクタル幾何学』
カール ボーヴィル (1997/12) 鹿島出版会 |
あまり聞かれなくなって久しい「プロポーション」という言葉に惹かれ出している。
そういう感覚による部分が多いような要素、議論や説明のしにくい個人の領域に行ってしまいそうなものとは、なんとなく距離をおきたいと思っていた。
しかし、人間の意識の部分でコントロールできるものなんてのは僅かにしかなく、もっと感覚を研ぎ澄ませて、それを信じたほうがはるかに可能性が拡がるような気がしてきている。
(数日前の養老孟司の番組でもそんな感じの主張をしていたが、時代の流れと言うか、振り子が逆に動き出しているのだろう)
プロポーション・テクスチャー・カオス・フラクタル・ゆらぎ・自然・美・ルーバー・断片・繰り返し・粒子・拡大・縮小・安らぎ・DNA
僕の中ではこれらの言葉がなんとなくひとつのまとまりとしてイメージされつつある。
“美とはDNAの中に刷り込まれた自然のかけら”だとすれば、造型論やプロポーションやフラクタルはそのかけらを共鳴させるための楽器のひとつといえるかもしれない。
(そうすると、ミニマリズム的なものは静寂のなかにしずくの音が時折響くイメージか)
今さらフラクタルそのものが目的になっては暑苦しいが、楽器のひとつとして扱えるようになるのもいいだろう。
音楽のイメージを拡げるのに楽器があっても良いように、感覚を拡げるためのツールがあってもよい。
この本はフラクタルの基礎的な説明から、建築のデザインへの応用まで分かりやすく説明されているなかなかの良著だと思う。
フラクタル・リズムや凝集といったものはデザインにおける様々な次元での応用がきくだろう。
それは自然のかけらをスパイスとしてデザインに忍び込ませるような使い方もできると思う。
だんだん『楽器』の練習をしたくなってきた。
フラクタルについて
■フラクタルの基礎的なこと
■フラクタルギャラリー
■建築では渡辺豊和がフラクタルを応用・展開している。