B125 『ウェブ進化論 -本当の大変化はこれから始まる』
梅田 望夫 (著)
筑摩書房 (2006/2/7)
遅ればせながらもやっと読みました。
もう2年近く前の本ですがさすがに面白かった。読み進めるごとに目の前がクリアになってその先に拡がっている可能性にワクワクと興奮しました。
ここで書かれているような事を、僕はちょうどこの2年のあいだにリアルに体験したような感じだったので「あー、この可能性を享受してるんだな」とその体験の復習という意味合いも強かった気がします。
著者の楽観主義に対する批判はあるようですが、その楽観主義も「あえて」のものだし、一つの大変化の節目となる著作であることは間違いない一冊です。もし未読の方がいましたら一読しておいて損はないでしょう。
ところで、この変化と変化に対して理解を深めることは僕自身にとってどういう意味をもつのでしょうか。
google等の提供する検索や「あちら側」のさまざまなサービスが生活そのものに大きく関わっているのは間違いないし、すでにこれらのサービスがない生活を想像するのが難しくなっています。
また、本書内で小泉圧勝についての項で書かれているように、大きな流れを生み出す力が開かれたこともそれがどういう方向に向くかは別として大きな意味を持つでしょうし、個人が何かをしようとしたときに大きな可能性が開かれたことは喜んでいいと思います。
まぁ、単純に便利、楽しくなったとも言えるでしょう。
では、建築の設計という仕事を考えたときにどういう意味があるかと問うと、まだ明確なイメージはありませんが、建築の一回性や設計の個別性を考えたときに案外ネットとの相性はいいんじゃないだろうかという気がしています。
ちょっとうだうだと書いてしまいますが、まず、自分の建築に対する考えをプレゼンテーションするツールとなります。分厚いポートフォリオを常に持ち歩いていなくとも、URLを書いた名刺がその代わりになりますし、名刺を渡さずとも知らない誰かがみてくれる可能性が広がっています。(実際はリアルベースのポートフォリオの方が説得力がありますが)
また、ロングテールで考えた場合、例えばハウスメーカーなどは明らかに恐竜の首でしょうし、小さい事務所は尻尾の方の存在でしかないでしょう。同じく顧客候補者の層も恐竜に例えた場合、ハウスメーカーでいいや、という層が首や胴体の方に存在し、生活にこだわりや信念のある多様な人が尻尾の方に存在します。
アマゾンなどのロングテールとは規模や意味合いが違うかもしれませんが、尻尾同士のマッチングが成立する可能性は大きくなったのではないでしょうか。
ただ、そのマッチングシステムはほとんど整備されていない気がします。ハウスコンペの類もありますが、ウェブの特性を特別活用しているものではないし、 設計者の負担を強いることで成立しているシステムでもあります。
設計事務所にとって相性の良いお客さんにめぐり合うことが最も重要なポイントなのですが、ウェブを特効薬的に利用するのはまだ難しいかもしれません。
とりあえず、ブログなどでのプレゼンテーションをし続けることしかない気がします。リンクを貼ってもらったりとネットワークが広がっていけばいずれ効果が出るかもしれません。(今はまだネット上の孤島のような存在ですが・・・)
ただ、営業営業したのはネットにそぐわない気がするし、最終的には設計というコンテンツが命です。
こつこつと楽しんでいきましょう。