B140 『アート/表現する身体―アフォーダンスの現場』
佐々木 正人 (編集)
東京大学出版会 (2006/09)
以前から、佐々木氏はどうしてアートやデザインにこうも肉迫できるのだろう、と思っていたのですが、この本の冒頭で理解できたように思います。
佐々木氏は若い頃に文楽(人形浄瑠璃)に魅せられて、その道を志して修行をしたことがあったそう。
文楽は途中腰を傷めて挫折したそうですが、その間に自ら修行をしながら超一流の人の身体から生み出されるものを目の当たりにした経験があったからこそ、理論をアートやデザインに結びつけることが可能になったのでしょう。
さて、この本は様々な研究者がさまざまなアートの第1人者について科学的に分析するパートと、アーティストへのインタビューのパートで構成されています。
ゲストとなるアーティストは
・劇作家/演出家:平田オリザ
・落語家:柳田花緑
・指揮者:井上道義
・ヴァイオリン奏者:マルグリット・フランス
・アニメーター:高坂希太郎
・舞踏家:岩名雅記
・写真家:新正卓
・文楽:吉田勘弥
分析のパートは少し読みづらかったですが、それを受けてのインタビューのパートはそれぞれのアートに対する姿勢、身体性とアートの関係を感じられて面白かったです。
建築における身体性、というものには昔から興味がありましたが、どうやって身体性を建築に結び付けられるからはこれからのテーマでもあります。
設計者の顔がみえる建物に魅力を感じるのですが、このテーマに関するヒントがここにあると思っています。