B001 『鬱力』

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鬱力

柏瀬 宏隆 (2003/06)
集英社インターナショナル



私はかねがね、現代社会において鬱的な傾向を持たないような人は、どこかしらに問題を抱えているのではないか?言うなれば、感覚鈍化性非鬱病症候群とでもいえる何らかの症状なのではないか、と思っていた。
そこに、図書館でこのタイトルをみてなんとなく借りてしまった。

著者は精神科医であり、病跡学(人物と病理の関係を探る学問)の成果をもとに、黒澤明や宮沢賢治、ゴッホ、モーツァルトといった天才の創作力・生きる力に「鬱(ここでは少し広い意味で捉えている)」がどう関わるかを分析していく。
「鬱」が大きな力になることを描いているが、著者は病気としての鬱そのものを肯定しているわけではないようだ(精神科医としての視点)。

先に感想を言えば、文章が説明的すぎて途中から少し退屈してしまった。もう少し、著者の意見を前面に押し出して欲しいところだったが、正確さをきすあまり少し控えめになっている感がある。
ので内容についてはここには記さない。

「きみ自身が深くて重い苦しみを味わったことがあるなら、それとおなじ種類の苦しみを味わっている人だけ、きみは救うことが出来る可能性がある。・・・『子供ための哲学対話』永井均」

深い「鬱」をかかえ、それに立ちむかった格闘の跡が見えるからこそ彼らの作品は人々の心の琴線に触れるのだ。上記の引用によると、抱えた「鬱」が深ければ深いほど多くの人に感動を与える可能性があるのだろう。

私もそういう何かを抱えているような人に密かに魅力を感じ、信頼したりするのである。そんなことを再認識した。





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