B105 『ヒット商品を最初に買う人たち』
- 森 行生
- ソフトバンク クリエイティブ
- 735円
Amazonで購入
livedoor BOOKS
書評/ビジネス
イノベータ理論に的を絞ったシンプルで解りやすいマーケティングの入門書。
ヴォリュームは少なめでさっと読めるし具体的な事例も載っているので著者が『『初心者にもわかりやすく」「それでいて中級者にも読むに耐える」本を目指した』と書いているとおり、ほんとの入門者がイノベータ理論のざっとしたイメージを掴んだり、中級者がそのイメージを固めたりするのには良い本だと思う。
イノベータ理論では消費者を「イノベータ」「アーリーアダプタ」「フォロワー」の3つのグループに分類するのだが、その中で最初に商品を買うのが「イノベータ」で彼らは、他人の意見を気にせず自分なりの判断基準を持ちよいものであれば新しいものでも積極的に手を出す。
それらを横目で見て真似をするのが「アーリーアダプタ」。商品が定着してから行動するのが慎重派の「フォロワー」。(それぞれの人口比率は「イノベータ」10~12%、「アーリーアダプタ」15~35%、「フォロワー」60~70%と言われている)
商品がそれらのグループに順に波及していくのをイメージすると物理の波動実験を見ているようで面白い。
そして、そのようにインーベータから順に戦略的に波及させようというのが「スキミング戦略」であり、本書の中心テーマである。(スキミング戦略は市場の上澄み(sikm)であるイノベータをまず捕らえることからきている。)
ここで思ったのだが、この本を献本して頂いた「本が好き!」プロジェクトは「あなたの書評からヒットが生まれる」というキャッチフレーズのとおり、まさにこの「スキミング戦略」を実行しているのではないだろうか。
そうなれば、僕らの役割はイノベータということになるから、自分の判断基準に忠実に書評を書くことが役割になろう。(この本でもヤラセのイノベータが発覚して問題になった例が取り上げられている。)
さて、例えば一品生産の仕事に近い建築設計事務所でこの理論は適用できるだろうか。
そのまま適用できるかは分からないが、自らの技術を商品と考えたとき、安易に大多数である「フォロワー」のウケを狙うのではなく、価値基準を持つ「イノベータ」に受け入れるだけの技術や価値を提供できることが大切ということだろうと思う。
あたり前の結論だけど。
その他イノベータ理論の周辺の「プロダクトライフサイクル」「プロダクトコーン理論(規格・ベネフィット・エッセンス)」「ペネトレーション戦略」「ゲームのルールを変える(従来型イノベータ・革新型イノベータ)」「ダブルイノベータ構造」といったキーワードにも触れられていて参考になります。