B164 『建築家の読書術』
平田晃久 , 藤本壮介, 中村拓志, 吉村靖孝, 中山英之, 倉方俊輔 (著) )
TOTO出版 (2010/10/25)
本当に久しぶりの読書記録です。気持ちを新たに、ということでこのタイトルから。
この本は5人の建築家がそれぞれ20冊を紹介しながらレクチャーを行った記録なのですが、それぞれの建築への取り組み方と紹介された本が密接に関係していて面白く読めました。
紹介されている本はこちら(※PDF)にまとめられています。
僕もこのブログはもともと読書記録からスタートしていて、
気がついたらなんとなく過ごす日々が多くなっていた。
本棚の本も読み流したままで自分の言葉にする作業を怠っていた。
脳みそも錆付きかけている。
そんな日常から抜け出すために溜まった本を読み返し、そこから自分の言葉を見つける作業を始めよう。
そうして、見つけた言葉の断片を寄せ集めて、もう一度自分の地図を描こう。(『読書記録』カテゴリー冒頭文)
と書いているように自分なりの地図、もっと言えば建築に向き合う際の羅針盤となるようなものをつくりたいという思いから始めたもので、読書記録を文字に起こすのはこれで164冊目になります。
建築に関して自分がどこに関心があって、どういう事を大切にしたいか、というのはこれまででぼんやりと浮かび上がってきているので、これからは実践を通してそれを建築に落としこむ方法をつくっていこうと思っています。
さて、この本に関してですが、登場する建築家が同年代ということもあり感覚的な部分で共感できるものが多かったのですが、その中でも中村拓志さんの「微視的設計」のところが参考になりました。(佐々木正人さんの本が紹介されてたり、自分と重なる部分も多かったように思います。)
こういう視点はいろいろな方がいろいろなところで語られていると思いますが、最近ネットをいじってることが多いこともあって、例えば下記のように直接建築とは関係の無いところから現在の身体感覚のようなものを感じました。
こうした、身体の行動、挙動に着目した、微視的なアプローチというのは、ネットの空間でも行われていると思うんですね。たとえばツイターのように、誰かがちょっとつぶやいたものがみんなに広がって、それがリアクションになって積み重なっていく。SNSでもアクセスが足跡履歴となって、反応が残る。足跡とかつぶやきというのはまさに小さなふるまいですね。そういうものが積み重なり、共振することで、公共的なるものがなんとなく現れる、というのがいまの社会だと思います。
それは、マスコミュニケーションの時代、マスメディアの時代とは全然違うと思うんです。マスメディアというのはやっぱり巨視なんですよ。(p139)
ツイッターがそのまま建築の形になるということではないわけですが、アプローチの仕方を変えることで建築の持つ質は変えうると思いますし、自分なりのアプローチを見つけなければ設計をしていてもどこかで行き詰ってしまいます。
この視点は藤村さんの超線形設計プロセスやdot architectsのアプローチにもつながる気がするのですが、小さなスタディを数が全体の輪郭をぼんやり出現させるところまで繰り返し、それによって生まれる豊かな関係性の可能性というのは確かにあるんだろうなという気がします。
また、手数がそのままコストに反映してしまうとするならば、施工の方法にアプローチしたり、思考・スタディの繰り返しによる密度・手数を、生まれた豊かさを損なわなずに再度シンプルなものに還元するような方法がテーマとしてありうるかも知れません。(その一つが寸法に還元するということでしょうか)
そういう事を考えながら、本を読むということは僕にとって自分のペースを維持するのに必要なんだなと感じました。
どんなに忙しくても、読書の時間ぐらいは確保できるように環境を整えていかなければ。