問いを携え、本質を探る B330『管理ゼロで成果はあがる ―「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』(倉貫 義人)
倉貫 義人 (著)技術評論社 (2019/1/24)
今回は軽めに。
読み始めた時はティール組織(未読です)なんかの流行りの概念をキャッチーに言い換えただけなんじゃないかという印象を受けた。新書でよくあるタイトルは魅力的で、人によっては影響を受けるだろうけど、実際実践するにはあまり役に立たない本。
しかし、実際には概念の輸入版ではなく著者の経験に基づいた具体的な実践の書だった。
本質から考える
本書から得られる知見は一言でいえば「本質から考える」につきる。
本書で描かれているノウハウはどれも具体的で、著者が実際に試行錯誤しながら見つけ出してきたものだ。
その根本には「どういう組織になりたいか」「どういう風に仕事ができると理想的か」「どうすれば必要な成果があげられるか」という命題について本質から考えていった結果たどり着いたものだ。
ノウハウが先にあるのではなく、なぜこうするのか、それをなくしたらどうなるのか、を常識にとらわれずに追求していく。
なので、ここで上げられているノウハウは、それぞれに大きなヒントが隠されているけれども、おそらくそのまま適用しても意味がないしうまくいかない。
その前にまず「どういう組織になりたいか」という理想をイメージすることが必要だろう。
そのために、どうすべきか。ノウハウや常識からではなく、本質から考えることの大切さを本書から学べるように思う。
問いを携え、本質を探る
結局のところ「本質から考える」とは、自分たちの組織をどうしたいのかを真剣に問うことだろう。では、自分の現場やチームに引き寄せたとき、どんな理想像が描けるだろうか。
とはいえ、何もないところから理想を描くのは簡単ではないし、本質と呼べるものを見つけ出すにはまだまだ何かが足りていない。
現場でもこうなるといいなというイメージはあるし、さまざまな課題に直面してもいる。しかし幸いなことに、この分野には多くの先達がいて、私たちは彼らの試行錯誤を参照しながら、自分なりの理想像を少しずつ磨いていくことができる。
大切なのは、借り物のノウハウをそのまま当てはめることではなく、眼の前の現実に向き合いながら答えを模索し続けることだ。その往復の中で、やがて自分たちなりの「本質」と呼べるものに辿り着けるのではないか。
少なくとも僕は、すぐに答えを出すよりも、この問いを抱えたまま試行錯誤や探究を重ねていく方がしっくりくる。理想と現実のあいだを行き来しながら、自分たちなりの輪郭を探り当てていく――その探究こそが、本書を読んだあとに残された宿題なのだと思う。
そして読書をすすめる中で、この宿題にヒントを与えてくれそうな断片がいくつか見えてきた。少しずつではあるが、つながりの兆しが形を帯びてきている気がする。これから先の読書や実践を通じて、その輪郭がどのように浮かび上がってくるのか――未知の領域だっただけに楽しみがたくさん残されている。
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