二-八 技術―出会いの方法

新鮮な出会い
技術とは、環境から新しく意味や価値を発見したり、変換したりする技術、言い換えると、新しい仕方で環境と関わりあう技術である。言い換えると、技術とは新鮮な出会いの方法である。
また、住宅など日常使いの建築の場合、常に新しい発見として出会うことは難しいかもしれない。しかし、一度生じた出会いの新鮮さは、「私である」と感じる領域の一つの要素としてある程度定着するように思う。であるから、出会いにはその瞬間のものだけではなく、経験として「私である」と感じる領域に定着したものも含まれる、と考えられるし、その出会いが新鮮であればあるほど「私である」と感じる領域は強くかたちづくられ、愛着や親しみと言った付随的な感情も増すように思う。
重ね合わせ・保留・ずらし
では、建築において新鮮さを伴うような出会いの方法にはどのようなものがあるだろうか。他にもたくさんあると思うが、3つほど列挙したい。
一つは出会いが重ね合わされたものである。例えば、一つのもの、要素にいくつもの意味や価値が重なりあって内在しているデザインに何とも言えない魅力を感じることがある。いくつもの可能性、環境との関わり方が埋め込まれており、自由さや不意に意味を発見する悦びとつながっている。
あるいは保留されたもの。例えば、完全に計画されたものではなく計画を保留されたある状況の中で、何らかの出会いと行為のサイクルが生まれ、その結果として、環境がさまざまな出会いを内包するに至ったとする。その環境に直面した時、何ともいえない魅力を感じる。これは、いわば自然に積み重ねられた技術と出会う悦びである。
全てを計画し切る建築というものはありえないだろうし、生活の中で不意に訪れる出会いは、ある状況から無計画に発生した環境にあることが多いように思うのである。
もう一つはスケールでも書いたようなずらされたもの。ずれそのものが新鮮さを伴うものであるし、ずれは、出会いの感覚を継続的なものとして定着させるように思う。
人は建築で、新鮮に出会う。
探索の精度を上げるための型/新しい仕方で環境と関わりあう技術 B209『日本語の文体・レトリック辞典』(中村 明)
知覚のよろこびと、場所への信頼 B247 『あらゆるところに同時にいる:アフォーダンスの幾何学』(佐々木正人)
出会う建築
動態再起論
環境配慮型ブランド
不動産