外部空間に恋して ~KDP主催の講演会
KDP主催で、昨日、今日と建築家の酒井一徳さんと手塚貴晴さんの講演会があったのですが、県内の建築家の話を聞くのも、著名な建築家の話を聞くのも、どちらも貴重な機会だと思い参加してきました。
酒井さんの話は遠くの話のようで、身近な話でもあり、奄美大島という場所を拠点に奮闘を続けられている姿にたくさんの刺激を頂きました。
また、手塚さんの話はそこにいる人達が、そこにいることを心底楽しんでいる様子が伝わってきて、あらためて建築の可能性に触れられた気がしました。
外への憧れを思い出す
思い返してみると、方法は異なるかも知れませんが、酒井さんも、手塚さんも、どちらも外というものを信頼し、大切にされているように感じました。
酒井さんは、中庭やハイサイドライト、トップライトなどを用いることと、視線などをコントロールすることを併用しながら、外へとつながる豊かな場所を生み出すのが上手く、体験として外の感覚を持たれているんだろうな、と思いました。
手塚さんは、そもそも内だ外だと言ってるのがナンセンスに思えるくらい、そこにいる人(特に子どもたち)が内も外も変わらず楽しんで使っていて、人間本来の姿を見せられたように思いました。建築よりも先にそこにいる人達がいきいきとしていることに感動させられました。
そういえば、と、自分も、昔から屋上という場所が好きだったり、例えば20畳のLDKをつくるよりは10畳のLDK+10畳のテラスなどをつくる方が気持ちが良いんじゃないか、と思っていたり、外に対する強い憧れを持っていたことを思い出しました。
予算や敷地の関係などで、実務の中では思い切ったことがあまりできていないのですが、こういう外への憧れは時々自分の中に浮かんできます。
手塚さんのスライドに出てくる子どもたちをみると、やっぱり、建築の豊かさって外の豊かさによる部分もかなり大きいんじゃないか、という気がしてきます。
(内部の面積を一般的な予算で可能な面積の3分の2以下にしてもいいので、その分豊かな外をつくりたい、という奇特な方はいらっしゃいませんかー)
また、ニコ設計室の建物を見てすごく感じたのですが、よく言われるマチに開く、というのは、オープンさ・透明さというよりは、外をどう使い倒しているか、が重要なのではないか。建物の内部に籠もり切っていない、という姿勢の表れこそ重要なのではないか、という気がします。
酒井さんの一部の建物のように、たとえ一見、外部からの視線をシャットアウトしているような屋外空間だとしても、そこに、人に楽しく使われている外がある、というのが分かれば、僕はすごく親しみを感じてしまいますし、それも一つのマチへの開き方だと思います。
大断熱時代の外を考える
さて、今後日本も大断熱時代に突入していくと思いますし、それはとても重要なことだと思います。
一方で、手塚さんの人間は本来、雑多なもの(音・光・温度・細菌等々)に囲まれていることでバランスが保たれているという話は体感的に共感できましたし、個人的にも大切にしたいと思うことと重なります。
しかし、根本的な姿勢の部分で、手塚さんの言われたことと、建物の外皮を強化して内部を外の環境から切り離すこととは、少なからず相反する部分があるように思います。
これに関しては自分の中でも揺れ動く部分があって、「建築全体の豊かさが上がるのであれば断熱性能は多少犠牲になってもいい、という考えは言い訳なのではないか」とか「断熱を言い訳にして本来の豊かさを犠牲にすることは人間にとって(特にこどもたちにとって)本当に良いのか」と、いろいろ考えてしまします。
どちらも満たせるのが一番に違いないのですが、この大断熱時代において、豊かな建築のあり方とは何か、もしくは豊かな外のあり方とは何か、しっかり考えて答えを見つけていく必要があると改めて思わされました。
実は、これに関してもニコ設計室の建物がヒントになると思っていて、彼らの建物の多くは内部と同じように外部も人が使う大切な場として、マチと建物の間に挟み込まれるようにつくられていて、そういう建物は内部を高断熱な仕様としても、外があるおかげで息苦しく感じる建物にはならないように思います。また、うまくすれば外部が内部の温熱環境をコントロールするような役割を果たすことができそうです。
もしくは内部空間を温熱環境の異なる入れ子状の構成にすることで、外部との繋がり方をの度合いをコントロールすることもできるかもしれません。
まー、いずれにしても、一定の予算の中でどう実現するかというのが課題にはなってくるのですが・・・。
(もう一度。内部の面積を一般的な予算で可能な面積の半分以下にしてもいいので、その分豊かな外をつくりたい、という奇特な方はいらっしゃいませんかー)
※タイトルは象設計集団の『空間に恋して LOVE WITH LOCUS 象設計集団のいろはカルタ』のもじりです。そういえば象設計集団の外部は大好きです。