BIM化に踏み込む前の不安とやってみての感想

  1. Home
  2. ブログ
  3. その他
  4. BIM化に踏み込む前の不...

(※この記事は以前noteに書いていた記事をベースに、使用しているVectorworks2022の環境のもとに書いています。)

BIM化を進めようと思った理由

はじめに、なぜBIM化を進めようと思ったのか。

その理由の一番は、設計業務を省力化・効率化して、より多くの検討の時間を確保したいということでした。

この仕事は一つの仕事に関わる時間が長く、仕事が集中した時にどう検討の時間を確保するか、というのが大きな課題です。それに、なぜか、同じタイミングで仕事が重なることが多い。

BIM化に踏み切る前は、2Dで図面を作図していたのですが、そのころから検討はほぼ3Dで行っていたので、CAD上で形ができているものを2Dに変換するという作業が二度手間に感じていました。
確かに、2Dで作図する際に気づくことが多く(それは今でもそうです。これに関しては後述)それなりに有意義ではあるけれども、図面化は単純作業という面も大きく心理的にストレスを感じる部分でもありました。

でも、どうやらBIM化をすると、3Dデータから図面をほぼ自動で起こせるらしい。
それならば、思い切ってやってみようと言うことでBIM化に踏み切った次第です。(2019年)

BIM化に踏み込む前の不安とやってみての感想

でも、なんの不安もなかったかと言うと、そうではありません。

BIM化に踏み切るにあたり、おおまかには4つの不安がありました。
その不安の内容とやってみての感想を書いてみたいと思います。

1.BIM化のコストに見合った見返りがあるか

まず第一に、BIM化のためにはCADソフトをバージョンアップする必要があり、それなりの金額と習得のための時間と言ったコストが掛かります。単純に、それにあった見返りがあるのか、というのが最初の不安でした。

それに対しては、徹底的に効率化を図ったことで十分に元が取れたかと思います。
モデルの作り込みにはそれなりに時間がかかりますが、もともとある程度やっていた作業ですし、BIMによる最終出力のイメージを掴みながら作業すれば、それほど極端に作業が増えるわけではないです。

それに、プラグインなどの自作にチャレンジしたことで、モデルや付随する情報の作成に関してもかなり自動化ができたため、モデリング自体の効率もアップしています。

そして、図面化のフォーマットを一度作ってしまえば、モデルから図面化するスピードは予想以上に上がることが分かりました。図面化という点で言えば、おそらく今まで1ヶ月程度欠けていた作業が4,5日でできるようになったんじゃないでしょうか。その分、意匠に限らず構造や環境に対する検討の密度も上げられたように思います。

それに、変更作業がめちゃめちゃ楽になったり、情報がモデルから引き出されるため図面の不整合がかなり減ったということも大きなメリットです。

いくつものメリットを享受できるようになるにはそれなりに時間をかける必要がありましたが、一度できてしまえば、その後はずっとそのメリットを享受し続けられます

これらのことを考えると、想定以上に効果があったと言って良いかと思います。

2.設計がソフトの機能によって縛られないか

BIMを進めるということは、それを実現するためのソフトに身を委ねることとも言えます。

ソフトに対応している機能がないため、もしくは、ソフトに合わせないと著しく非効率になるために、設計内容をソフトに合わせることになるのではないか。そんな不安が大きくありました。

それまでも、ソフトの機能に縛られることが嫌だったので、Vectorworksを意識的に汎用CADとして捉えて、建築用の特殊な機能はなるべく使わないようにしていました。その姿勢を根本的に変えることが本当に良いことなのか、という不安が一番大きかったかもしれません。

これに対しては、やりたいこととソフトを扱う技術次第、ということになるかと思います。

確かに、建築用のツールを使っていると便利なのですが、便利故にそのツールがつくれない設計・モデルに対して面倒に思うことがないわけではないです。

しかし、それを差し引いても全体の効率化が勝るので、面倒なモデリングをやってみる価値はありますし、逆に、これまで図面化が大変すぎるからと躊躇していたような設計も図面化がほぼ自動でできるため躊躇しなくてもよくなったということもあります。

また、例えばスキップフロアなど、モデルを図面に変換するのが難しいこともありましたが、試行錯誤してフォーマットさえできてしまえば問題ではなくなりました。

道具である以上、何かしらの制約があるわけですが、それは工夫によって乗り越えられることが多いですし、道具そのものを作り変えるという道筋も用意されています。

3.ブラッシュアップのきっかけを失わないか

最初の方で書きましたが、2Dの図面化作業は単なる作業という面が強い半面、作図の中でブラッシュアップのきっかけを掴むということも多いです。その作業をカットすることで、ラッシュアップのきっかけを失わないか、検討の時間を確保するために効率化したのが、検討の質が下がって本末転倒にならないか、という不安がありました。

これに関しては、モデリングの過程でもブラッシュアップのきっかけが掴めるので、それほどマイナス面は感じない、というのが今のところの感触です。

といっても、2Dの図面化の時とまったく同じようなものが掴めるかといえば、そうではないので、スケッチや模型も含めたいろいろな検討手法を組み合わせていくことに対しては意識的であった方が良いように思っています。

4.図面表現の質が低下しないか

BIMでは図面表現はソフトの機能に委ねられるわけですが、それで図面表現の質が担保されるのか、というのも不安の一つでした。

設計者それぞれ、図面がその機能を発揮できるように表現にはいろいろ工夫していると思うのですが、それがBIM化によってどうなるのか想像がつかなかったです。

これに対しても技術次第と言えますが、何かしらの制限を受けるのは確かです。一番苦労したのはこの部分だったかもしれません。

例えば、線の太さに関してはそれなりにこだわりがあったのですが、それがなかなか再現できずに苦労しました。最終的には試行錯誤を繰り返しながら、既存の機能を調整したり組み合わせることでなんとか及第点になったように思います。

全体としての図面表現は、ソフトの機能として多様な表現が可能なことと、モデリングさえしっかりすれば、細部を再現した密度の高い表現もかのうなことと合わせて、2D作図をしていた頃よりもよくできたのでは、という気がしています。

まとめ

全体としては、最初に抱えていた不安はほぼ解消できているように思いますし、今となっては以前のやり方に戻ることは避けたいと思うようになりました。

また、工夫次第でどこまでも改良できる、という設計環境をつくっていく楽しさも生まれたように思います。





関連性の高い記事