B127 『モナ・リザと数学 ~ダ・ヴィンチの芸術と科学』
- ビューレント・アータレイ、高木 隆司、佐柳 信男
- 化学同人
- 2310円
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書評/サイエンス
久々の本が好き!プロジェクトからの献本。
300p以上に渡ってダ・ヴィンチを軸に芸術と科学について書かれた本書は読み応え抜群。
じっくり読んでいたら結構時間がかかってしまいました。
同じ出版社から同時期に献本されていた他の本のタイトルはどれも興味をひくものばかり。概ね評価も高かったようですし、この『化学同人』という出版社は結構良いかも。
タイトルと薄っぺらな内容だけで引っ張れるだけ引っ張るような本も多い中、真正面から化学(科学)と向き合って出し惜しみなく直球をばんばん投げるようなスタイルはこの出版社の出版や化学(科学)に対する哲学と自信を感じさせます。
ただし、美味しいところをピックアップしてさぁどうぞ、という感じじゃないので、オタク的に入り込めない厳しいところもありますが。
さて、この本を読んで。
芸術と科学をつなぐことが一つのテーマだと思いますが、その前にそれらが別々の方を向いているという感覚が僕には余りありません。
自然が両者の仲介役であるというよりは、 両者とも自然を表している同じ兄弟という感覚です。それは、わざわざ声高にいうようなことでもない気がしますがどうなんでしょう。
内容についても芸術と科学の接点を本気で知りたいという人には多少物足りないというか冗長な感じがします。取り上げられている接点は黄金比を中心とした割と古典的なものがほとんどでそんなに新しい視点はないですし、”芸術と科学の接点”となる新しい学問でダイナミックなものは他にいくらでもあります。(いくつかは”自然のかけら”としてこのブログでも紹介しています。)
そんな新しい学問とダ・ヴィンチが絡めてあればもっと面白かったと思います。(押絵も少なく見難いのでその辺もちょっと不満。)
ただ、ダ・ヴィンチの天才ぶり、というか好奇心の塊っぷり・マルチタレントぶりがその冗長さによってかえって表れているかもしれません。
ダ・ヴィンチマニア、もしくはオタク的に入り込める人には凄く楽しい本でしょうし、ダ・ヴィンチから学べることも多いです。(著者にも少しオタク気質を感じます)
ということで、『モナ・リザと数学』という視点であれば△、ですが副題の『ダ・ヴィンチの芸術と科学』という視点であれば :まる: 、といった感じでしょうか。