B044 『建築ツウに訊け!』
大島 健二 (2006/02) エクスナレッジ |
本屋で別の本を探しているときに見つけて、立ち読みで済まそうかさんざん迷った挙句、装丁に惹かれてつい買ってしまった。
”大島本”は4冊目だそうだが、前3冊はなんとなくキャッチーな題名だったため気にも留めてなかった。(そのキャッチーさがある種のユーモアだと読んで分かった。)
いっきに読める内容で面白かった。いや笑えた。
「生協の白石さん」のパロディのような(読んだことないが)読者の質問に著者が答える、という体裁をとっているのだが、この質問の部分だけで十分笑える。(質問の多くは”オースガ編集長”によるそーだ)
笑いの部分を伝えようとするのは野暮なのでやめるが、内容はなかなか深く鋭い。
建築家の生態や問題、隠れた規範などを鋭く浮かび上がらせる。
思考停止を鋭く指摘されドキッとする部分も多々あった。
それをユーモアたっぷりに読ませる文章に仕上げる大島健二、なかなかやる。
皮肉交じりにも読めるが、実際には建築に対する愛情にあふれている。
これからも建築家は社会から大いに訊問され続けていくことでしょう。それに対して建築家は逃げずに、スカさずにキチンと自分なりの意見を述べていきましょう。くれぐれもどこかで聞いたことのあるようなセリフを棒読みしないようにしてください。また、広くはなったが、ちっとも深くならない建築に対するフツーの人々の認識、建築家と同様に自分なりの意見をもてるように精進してください。(あとがきより)
まー、建築やってるなんてのは相当の変人であることは間違いない。
もしかしたら、建築家に対する『なぜ○○するのか?』という問いは、一昔前にはやった『なぜ人を殺してはいけないのか?』という問いのように、答えようとすること自体がナンセンスなことかもしれない。
それは、理論で片付けることのできる種類のものではないのだ。(それに対して理論武装するのも建築家の性向のひとつであるのだが。)
とにかく薄笑いと共に気持ちが軽くなる本でした。
内容はなかなか伝えられそうにないので『自分は建築ツウだ』とか『建築ツウになりたい』と一度でも思ったある人は読んでみて下さい。