B153 『建築史的モンダイ』
藤森氏の著書らしく、すらすら読めていくつも目から鱗が落ちる一冊。
著者の書く文章の分かりやすさは、建築史家としての視点につくる側の視点、建築家としての視点がうまくまざって、つくる上での「具体的な勘所の指摘」がなされている点にあるように思います。
こういう勘所はたぶん一般の人には必要ないし、むしろそうと気付かれずに決定的な違いを生み出して「なぜか分からないけど、ナニナニと感じた!」と感じさられたほうがいい。(勘所を知っていれば知っているで鑑賞の楽しみができますが)
だけど、つくる側にとっては
・・・具体的なデザイン上のポイントはどこにあるのか。そのことがはっきりしない限り、建築を物として、形として造るしか能のない建築家はまことに困るのである。
と著者が書いているように、その勘所こそが重要で、そういう勘所を自ら発見してこっそりと建築に忍び込ませることができるか、それによって決定的な何かを生み出せるかどうかが、建物を建築たらしめられるかどうかを決めるのだと思うのです。
そういう意味で、藤森氏の文章を読むといつもいくつかの鱗が落ちるのとともに初心に帰ることができます。
例えば古い建物からでも現代に通ずるような勘所を拾い上げられるような観察眼を鍛えることが僕の課題の一つですね。