Vectorworks版Ladybug tools(5) 光環境解析
(※この記事は使用しているwindows,Vectorworks2022の環境のもとに書いています。)
今回は光環境解析について。サンプルファイルの「光解析」レイヤにあります。
解析用モデル作成
まずは解析用のモデルを「光解析用オブジェクト」レイヤーに作成します。
サンプルファイルでは、以下のクラスでモデル作成することを想定しています。
・radiance-room・・・honeybeeではroomという単位で解析を行います。roomは閉じた3D図形として作成し、図形の各面が厚みのない外皮(もしくは隣接するroomとの間の壁など)として扱われます。部屋ごとに作成しても良いですし、建物全体をroomとしても構いません。必要に応じて設定してください。(私は光解析の場合建物全体を一つのroomとし、間仕切りや床などはshadingで作成しています。複数の床を解析したい場合はanalisyssurfaceを複数設定するようにしています。)
・radiance-analisyssurface・・・解析したい床面を面図形で作成します。床として扱われるroomの底面を解析面とすることもできるので必須ではありません。多角形の向きによっては、法線が裏面を向いて解析がうまくいかないのでその場合はオブジェクト情報パレットから向きを反転させてください。
・radiance-glazing1~2・・・光を通すガラス開口などの3D面図形です。3D多角形をroomの面にぴったり重なるように配置します。2つ用意しているのは、開口部によって透過率を変えることを想定しています。
・radiance-shading1~2・・・内部および外部の光を遮る庇や間仕切り壁、床などの3D図形です。honeybeeではoutsideとinsideを分けていますが、光解析の結果は変わらなさそう(エネルギー解析ではinsideは無視されるそう)なのでデータ上は区別せず、outsideのポートに流しています。
2つ用意しているのは、物によって反射率を変えることを想定しています。
・radiance-context・・・周囲の建物などの3D図形です。
モデル作成時の注意点
モデル作成時の注意点です。
・analisyssurfaceは3D多角形で作成しますが、面の向きによって解析面の高さがマイナスになるため調整が必要。
・glazingはroomの一つの面に重なるように3D多角形で作図する。
・掃き出し窓などのようにglazingがroomの底辺に接しているとエラーとなるため、150程度浮かせて底辺から離すか、roomを150程度低い位置から作成して、analisyssurfaceを用いる。
・roomをhoneybeeのモデルとして取り込む際に、5角形以上の面があると面が三角形に分割され、その分割線がglazingに干渉するとエラーになることがあります。その際は、roomを5角形以上の面がでない複数の3D図形に分割して作成してみてください。
モデルチェック
一度「光環境解析」を実行すると、honeybee用のモデルデータが生成され、PCに保存されます。
「光環境解析」を実行後に「モデルチェック」の「HB Load Objects」の「itemObjs」ポートを「Roomラベル表示normal」「Roomラベル表示radiance」「HB Visualize by Type」のいずれかに接続し実行するとモデルチェック用の図形が生成されます。詳細は省きますのでいろいろ試してみてください。
日射解析
光環境解析をするには、モデル作成後、「光環境解析」ノードを各種設定の上実行してください。
設定項目は、
計算切替・・・光環境解析では様々な解析が可能です。どの解析タイプで計算をするかここで切り替えます。offにすると計算せずにワイヤーフレームのみ表示されます(「ワイヤーフレームを表示」がオンの場合)。
測定高さ・・・解析面から何mmの高さで測定するかを指定します。その面に解析用のメッシュが作られます。
グリッドサイズ・・・解析面をグリッドに分割するサイズ。サイズを小さくするほど計算に時間がかかるので適宜調整してください。
開口部奥行・・・開口部およびroomのモデルは、厚みのない面で作成するため、ここで厚みとなる奥行きを設定します。およその壁厚を入力すれば良いかと思います。
ワイヤーフレームを表示・・・実行時にモデルのワイヤーフレームを作成するかどうか。基本的にはチェックで良いかと。
レコードフォーマット書き出し・・・各解析面の結果をレッコードフォーマットに書き出すかどうか。書き出したものは「ladybug dataを表示」ノードで文字図形にできます。
room間の境界を空気にして結合・・・roomを複数の図形で作図した際に境界を壁とみなさない場合はチェック。私は、ここにチェックを入れて、間仕切り壁やその開口、床などは別にshadingクラスで作成しています。
メッシュを画像として書き出し・・・解析結果のメッシュを3D図形ではなく画像として書き出せます。(レンダリング無しで色が表示できますが、うまくいかないこともあります。)
グラデーションタイプ・・・グラデーションをどういう色で表現するか。計算切替の内容によって変えても良いかと思いますので、いろいろ試してみてください。
オブジェクト設定・・・基本的な部分はこれまでと同じですので省略。遮蔽物の反射率とガラスの透過率は特殊なケースの場合に設定すれば良いかと思います。
DA用設定-設計基準強度lx・・・DA値を算出する際の基準照度です。
グレア用設定-グレアしきい値・・・グレア判定用のしきい値。
特定日時用設定・・・計算切替で特定日時を選択した際に設定してください。天候も指定できます。(期間での計算の場合は気象データの天候が採用されます)
次に、解析タイプの説明をします。
年間DaylightAutonomy分布
DaylightAutonomy(通称DA値。年間を通して有人時間内に基準照度を満たしている割合)の分布です。ここではその場所が平日の午前8時から午後5時までの間に基準照度以上となる割合を計算しています。
年間放射照度分布
年間を通しての太陽放射照度(単位面積あたりに入射する放射束)の平均値の分布です。
年間グレア分布
年間を通してグレアがない時間の割合を示します。
特定日時照度分布
特定日時の照度(単位面積に入射する光束量)の分布です。
特定日時輝度/放射輝度/放射照度分布
特定日時の輝度(面積のある光源を観測者側から見たときの眩しさを示す単位)/放射輝度(単位面積・単位立体角あたりの放射エネルギー量)/放射照度の分布です。
どれもサンプルを動かすと特定日時の照度分布が表示されてしまいます。対応させるのを忘れてたっぽいです。「光環境解析」ラッパー内、HB Point-In-Time Grid-BasedノードのiMetricポートの値によって0 = 照度 , 1 = 放射照度, 2 = 輝度, 3 = 放射輝度と計算を切り替えられるのですが、そこの切替機能が抜けています。(どこかに修正後のファイルがあるような気もしますが・・・)
せっかくなので、計算切替の値によって、この数値および凡例とタイトルのテキストを切り替えるのようにマリオネットを修正してみてください。(近々、修正したものをGithubで更新します。)
(Github の v0.3.1 で修正済みです)
これらはhoneybeeの機能のうち一部をまとめたもので、例えば特定のポイントからの照度等の分布を画像として出力するなどもできます。興味のある方は、他のノードの活用にも是非チャレンジをしてみてください。(気になるノードがあれば、Ladybug toolsのフォーラムでそのノード名を検索すれば、真似できそうなサンプルが見つかることがあります。)
今回は以上です。
次回はエネルギー解析を予定しています。