W055 第1回五木村民族調査

五木村のとあるプロジェクトでオフィスフィールドノートの砂田さんのお手伝いをさせて頂いているのですが、この日は2つの会議と合わせてフィールドワークに出るということで同行させて頂きました。

初日ということもありいくつかの地区をざっと見て回ったのですが、何件かの民家では、お話をお伺いしたり、生活の道具などを見せて頂くことが出来ました。

受容と格闘を強いられ続けた五木村

五木村は御存知の通りダム計画によって半世紀にわたり翻弄されてきた地域ですが、いくつかの本を読んで浮かび上がってきたのは、村に残った人、村を出た人、さまざまな人が村を愛しながら生きていくために一生懸命なリアルな姿でした。その中には村の将来のために涙を飲みながらダムを受け入れるという選択をした人がたくさん含まれています。

村の中心地がダムに沈むということで多くの人が村を離れましたが、それはそれまで何とかバランスを保っていた他の地域の生活にまで大きな影響を及ぼしました。
ダムが中止になったからといって、水没予定地の生活と歴史・自然はもう取り戻せませんし、崩れたバランスをそのまま元に戻すことも難しいでしょう。

それでも、村では現状を見据えて未来をみざるを得ない人々が現在進行形で格闘をしています。

自然と生活

仕事柄、生活とは何か?どうすれば豊かな生活が送れるのか?また、自然とどのような関係を築けるか?ということをいつも考えているのですが、ここ五木村にはその2つが理想的な形で結びつきながら存在しています。
幾つかお話を聞かせて頂いた民家では、自然の中で生きていくために工夫をしながら身近な材料で道具を自作し、小さな暮らしを継続させてきた姿を見ることが出来ました。
手元にあるもので自ら「道具を作る」ということがどれほど豊かな生活に結びついているかを再確認させられました。これらの道具がもし他の地域・他の材料で大量生産されたものであったならばこれほど豊かな印象は抱けなかったと思います。(それは、外部からの視点でしかないかも知れませんが、自分の経験からしてもそこにはある種の満足感や安心感が存在するはずです。)

貨幣経済は生活を細分化し、私たちの手元から遠ざけてきました。それは昔に戻りそのままの形で取り戻せるようなものではなく、現代の生活の中で新たなあり方を模索していかなければならないものだと思います。
先述したように五木村でも人が村から離れ道路が通り便利になることで、これらの理想的な形の継続が困難になってきている地域もたくさんあります。
こういった道具のあり方も失われていくかもしれません。

おそらく、この場所でもこれから新しい生活あり方が強く求められるのだと思います。

だからこそ、この現在存在している(存在していた)理想的な生活のあり方の形を適切に浮かび上がらせて次の世代へと伝えていく必要があるのでしょう。
それは過去を懐かしむためにではなく、ここ五木村でこれまで強いられ現在も続いている格闘のように、新しい未来をつくっていくために必要なのだと思いますし、ここを訪れる人にも何かの未来を過去とともに示してくれる価値のあるものだと思います。

できることはちっぽけな事かもしれませんが、そのような気持ちでこのプロジェクトに関われることができればいいなと思っています。

反省点

大きな反省点は肝心な写真が上手く撮れていなかったり言葉を記録できてなかったりで、いざブログに書いてみようと思い立った時にあまり良い資料が残っていなかったことです。
同行している人と同じことをしても邪魔になるかなと思ったり、住民の方に遠慮したりしていたのですが、せっかく行くからにはきっちり写真を取り、スケッチ・メモ書きを残そうと心に決めた次第。
ブログに書こうとすることも調査の心がけにつながるような気がします。ただし、そればかりに心を囚われないように気をつけないと現場で感じることが疎かになりそうですが・・・(おそらく僕の役割としては具体的な記録よりも現場の空気を肌で感じて共有できるものを見つけることの方が大切だと思うので)。

頭地地区の水没予定地の橋より。代替地はずっと上にあり川まで心的な距離がかなりある。
入鴨地区の水際の風景。川と木々の景色が素晴らしい。
昔善能寺があったという入鴨観音堂。今では2名ほどしか世話が出来る人が住んでいないそう。
堂内
堂内。
堂の裏手には名もない歴代住職の墓石群が残る。
近くには別のお堂も。
道路脇には軌道らしきものがあった。近くにトロッコ道があったのだろうか。
アワやキビ他多様な植物があり生活の営みを感じさせる。
小鶴地区あたりのチッソの発電所が風景をなしている。発電所の近くは村でも明かりが電灯になるのが早かったそう。
出る羽の民家の農具。山手で作業するために軽くて柄が短いのが特徴。
別の用途の道具の転用だろうか。
別の民家でも様々な自作の道具が見られた。
竹細工の仕事は丁寧で素人によるものには見えないほど。
茅葺屋根にトタンを被せた母屋と屋敷畑。自然と一体となったような生活に生きる力と豊かさを感じた。
割いた竹を水に浸してあった。
出る羽の山頂付近にあった神社。周り木々は立派で神々しい雰囲気。
炭焼き窯は随所で見かけた。現役のよう。
内谷地区。石崖によるひな壇状の風景が特徴的。
オノケン

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オノケン

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