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書評/社会・政治
”本が好き!”プロジェクト書評第1弾。
つまらない本だったらどうしようかと思っていたが、そんな不安もなんのその、期待以上に面白い本だった。
僕自身は、最近の自己主張の強い化粧はなんだかなぁ、と思うぐらいで化粧にはさして興味も知識もなかったのだが、それが逆に本著の内容が新鮮に感じられて良かったのかもしれない。
文章も読みやすいし、「叶姉妹」「藤原美智子」「君島十和子」「中村うさぎ」と特徴のある個人を中心にした章立てもよかった。
化粧がガングロ・コギャルを皮切りに「大人の身だしなみ」から「ウチらのはやりモン」に、またスーパーモデルの登場によって「生来の美」から「獲得される美」へと変わり、”化粧は人格”とのカリスマ(教祖)の呼びかけで美人道という宗教になり、化粧そのものが自己目的化し膨大な語彙と文法、文体のある「読み」「書き」「語る」ことのできる趣味・道楽となって人々を虜にし、「意味」から自由になるため、現実の世界から虚構の世界へと逃れるための手段となる。
ダイナミックに話が展開するのには、読み進めるたびになるほど!と推理小説の謎を一つ一つを解いていくような喜びがあった。
終盤、コスメフリークが東浩紀の動物化するオタクと合流するあたりは、ようやく犯人にたどり着いた!という感じだ。
その謎解きの詳細は是非本著で味わっていただきたい。
さて、意味から自由になりポストモダンの世界を生き抜く達人であるコスメフリークとオタクたち。
その先に見えるものは何か、というのがこのブログの最初からのひとつの課題であったのだが最近は少し当初と感じ方が変わってきたように思う。
以前はその突き抜けた先にある可能性というものにある種の期待を抱いていたのだけれども、このごろはその態度は自己防衛的な一時的避難でしかなく、長いスパンで考えた場合やっぱりその先には何もないのではないかという気がしている。
自己防衛を進めていくのではなく、自己防衛をしなくては生きられない現状をずらさなくてはどうしようもないのではないか。(宮台真司の方向がこんな感じで変わった気がします)
コスメフリークとオタクたち、両者には逆に自由に縛られている不自由さのようなものを感じてしまうのは、彼らに対する嫉妬からだけだろうか?
動物化の行き着く先は自由をエサに飼いならされ搾取される「自由管理社会」のような気がする。
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TITLE: うーーーーん!!
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↓鋭い考察だと思います!
>以前はその突き抜けた先にある可能性というものにある種>の期待を抱いていたのだけれども、このごろはその態度は>自己防衛的な一時的避難でしかなく、長いスパンで考えた>場合やっぱりその先には何もないのではないかという気が>している。
>自己防衛を進めていくのではなく、自己防衛をしなくては>生きられない現状をずらさなくてはどうしようもないので>はないか。
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>旦那@八丁堀さん
コメントありがとうございます!
↑は仕事柄、ずっと考えているテーマですが、いまだにこうだ!とは自信をもっていえません・・・自信ではなく自身をもって言えばいいのでしょうが。
八丁堀さんの誠実な(?)書評、参考にさせていただきます。
PING:
TITLE: 鋭いオタク論です>>>電車の中で化粧する女たち―コスメフリークという「オタク」
BLOG NAME: 旦那@八丁堀
「電車の中で化粧する女たち」。期待以上に面白かった・・・と言いますか切り口が鋭い!と感じました。電車の中で他人の目を気にせず、一心にメイクにふける女性。曰く、家の「ウチ」「ソト」の境界線意識が希薄になっている。曰く、他人への関心の欠如。これらが一般によく